組織や場所にとらわれず働くには?活躍の場を広げ、自分で道を切り開く生き方のコツ

2020.11.17
イベントレポート

H¹Tでは人生経験シェアリングサービス『another life.』とタイアップし、働き方改革の最前線で活躍するゲストとこれからの働き方について考える『H¹T LAB~働き方改革最前線~』を定期開催しています。

第4回目のイベントでは「大手企業での新しい生き方 組織や場所にとらわれず働くには?」をテーマに、トヨタ自動車から出向し、株式会社アルファドライブで働きながら有志活動「ONE JAPAN」の理事や一般社団法人「ONE X」の共同代表理事などで活躍する土井雄介さんと、通信会社大手で働きながら有志団体「O-Den」の副代表や「ONE X」の立ち上げなど、幅広い活動をしている太谷成秀さんを迎え、「活躍の場を広げるためのコツ」や、「自分で道を切り開く生き方」についてお話を伺いました。本イベントの様子をレポートします。

【ゲスト】

  • ・土井雄介さん(株式会社アルファドライブ)
  • ・太谷成秀さん(通信会社大手)

【モデレーター】

  • ・新條隼人(株式会社ドットライフ代表取締役社長)

大企業ならではの悩みとは?

お二人は大企業の若手有志団体のコミュニティである「ONE JAPAN」などの活動で、大企業の若手と会う機会が多いと思いますが、その中でどういった課題を抱えている方が多いですか?

土井:僕は二つあると思っていて、一つ目はやりたいことがあるけれどできない人たち。何かしらの枠にとらわれてしまっていることもあれば、トップダウンの組織でいろいろ決まってしまっていて身動きが取れないパターンもあります。

二つ目は漠然とした不安を抱えている人たち。これは特に大企業に多くて、会社を辞めようかなと悩みながら働いている人も少なくないです。

一つ目の人たちがやりたいことができない理由として、例えば何が考えられますか?

土井:基本的に会社の経営方針にあったものを効率的にやるのが、大企業としては最も正しいやり方ですよね。その環境の中で新しいことにチャレンジするとなると、やりたいことが本業から遠くなるほどアクションするのは難しくなると感じています。

二つ目の漠然とした不安を抱えている人たちの心境を、もう少し具体的にするとどんな感じなのでしょうか?

土井:若手で大企業を辞める人は、自分が成長していないと感じたり、閉じた環境にいると思ったりすることが多い気がします。

でも個人的には全然そんなことはないと思っていて、実際大企業には優秀な人が多いし、やろうと思えばできる人ばかりです。しかし目の前に「大企業」という名の壁を自分で作ってしまって、横から見れば薄い壁かもしれないのに、正面に立って大きな壁だと思い込んでいる。まわり道すれば越えられるものだとしても、それができないのが大企業の若手社員のよくある悩みかなと思っています。


土井さん

太谷さんは大企業の悩みというと、何か思い付くものはありますか?

太谷:自分自身の悩みと照らし合わせてみても、今の土井さんの話はとても共感できます。目の前にある大きな壁は、実は横から見ると薄い壁という感覚もわかります。

私は物事をWillとCanとMastで考えるようにしていて、社外の活動を始める前は毎日Mastの営業ばかりやっていていいのか、このままでいいのかという漠然とした不安があり、将来何がやりたいのかというWillの部分が全く見えなかったのが大きな悩みでした。

もう一つはシンプルにCanのところにも悩みがあって、営業以外のスキルは身につけなくていいのかという部分にも悩んでいました。

そんな悩みを持っていた中で社会人2年目のときに、外の世界と繋がりをもって活き活きとしている先輩に出会ったのが変化のきっかけでしたね。

活躍の場を広げるためには?

お二人は大企業に所属しながら、その他の場でも活躍していますよね。そのように活躍の場を広げるためにはどうしたらいいのでしょうか?

太谷:私は先ほども話した外の世界と繋がりをもっている先輩に出会ったのをきっかけに、有志団体のイベントに参加してみました。そのとき参加者全員が仕事を楽しくようとか、ワクワクしながら働こうという考えをもっていることに驚いて。所属する部署の普段会っている人たちだけと仕事していると、どうしても自分の生活がそこだけの世界になってしまうので、なかなか新しいWillをつくれない。外の世界と繋がれる場に一歩踏み出せば、その先にどんどん繋がっていくことを知れたのが自分の中では大きな変化でした。今日皆さんに絶対お伝えしたいと思っているのは「一歩踏み出すこと」。何かやってみるとか、どこかに行ってみる癖をつければ誰でも新しいWillを見つけられると、私は思っています。


太谷さん

土井さんはどう思いますか?

土井:周りを変えるのは大変なので、自分が変わったほうが早いと思っていて。皆さんも覚えがあると思うんですけれど、会社の飲み会でみんな愚痴しか言わないなんてことよくあるじゃないですか。これって現状の不満を環境のせいにしてしまって、変えることを諦めているんだと思うんですよね。その考え方を捨てて、自分は変われないと思い込まずに一歩踏み出したら絶対に世界が変わるはずです。

僕もひたすら飲み会をしているようなタイプだったんですが、何かワクワクすることを自分で作っていこうと思って、まず自分が変わったのが活動の場が増えた最初のステップですね。

自分が変わると何が起こるかというと、周りに応援してくれる人が出てくるんですよね。例えば社外の偉い人、あとは社内の役員さんとかが味方になってくれるとめちゃくちゃ強いんです。社外の偉い人が土井の名前を出したなんてことが起こったり、メディアに出たりすると周りの反応もガラッと変わってくる。

つまり自分が変わったことで周りが変わると味方ができて、味方がついてくることでさらに環境が変わっていく。そんなステップが生まれてくるかなと。

周りと違うことをすると味方になってくれる人もいると思いますが、批判する人も出てくるんじゃないですか?

太谷:そうですね、意識高い系って言われますね。

土井:意識高い系だったらまだいいんですけれど、宗教家になったとか言われていました。でもそんな訳のわからないこと言われるくらい、周りから見ると僕自身が訳のわからないことを言っていたんだと思います。私の会社で例えると、車の売れゆきが好調な中なのに、イノベーションとか新規事業とか言っていたので。

当然、批判や同調圧力はたくさん感じていたんですけれど、僕が活動し始めた1〜2年後ぐらいに会社として大変革を進めるような雰囲気になっていったこともあって、いいタイミングで会社がついてきてくれました。

たまたま一歩先にいけていたので、運よく流れにのれて、ここまで来れたんだと思います。

自分で道を切り開く生き方

お二人のように「自分で道を切り開く生き方」をしていくにはどんなことを心がけたらよいでしょうか?

太谷:私は一個一個の自分のやっていることを個別に考えるんじゃなくて、何をやりたいのかという自分のWillを毎週振り返るようにしています。個人的にはWillは変わるものだと思っています。変わっていいのかという不安を抱く人もいると思うんですが、様々な人に会ったり、知らないことを知っていったりするとWillが変わる確率は高い。

そういった考えから毎週Willを振り返りながら自己を作っていくことが、Willを変えないようにするよりも大切なことだと思っています。

振り返りをすることで自分の優先順位が整理できて、結局どれがやりたいんだろうとか、どれをやるべきなんだろうというのが分かってくるかなと。私が学生時代を思い返して後悔しているのは振り返りをしなかったことです。何かをやってみるというのと、人と会ってみることはできていたんですが、振り返ることは一切やっていなかった。経験を踏まえて自己を作っていくことができていなかったので、何をやりたいのか聞かれても答えられなかったんです。そういった経験からアクションを起こしたら振り返るところまでセットでやっていくのが重要かなと思っています。


イベント内でご紹介いただいた太谷さんの活動一覧。都度、ご自身で優先順位をつけているとのこと。

土井さんはどうですか?

土井:僕もやりたいことは変わると思っていて。皆さんも絶対そうだと思うんですよね。1年前と言っていることが違うなんてよくある話ですよね。ただ、何を始めるにせよいきなり転職して環境をガラッと変えるのはリスキーだと思うので、兼業などゆるい形で、やりたいことがちょっとでも見つかったときに、とりあえずそこに飛び込むのが大事だと思っています。

興味を持ったときに自分の時間の何パーセント使うかとか、想いの中の何パーセント使うかとか、そういった調整をする感覚は一つの会社で働いてる人たちにはなかなか無いかもしれません。これを手探りでもやるようになるとパラレルキャリアになっていって、だんだん変化や自分の進歩が生まれてくると思います。

ありがとうございます。最近でいうとコロナで働き方が変わってきていますが、社内コラボレーション、社外コラボレーションの生まれやすいような働き方やオフィスの在り方など、何か感じることはありますか?

土井:最近コロナで働き方が変わって出社しなくてもいい人が増えた状況の中でも出社している人は、意思を持って出社していると思っていて。オフィスにいなきゃいけないからいるんじゃなくて、多くの人はきっと何か目的があって出社するようになりましたよね。

オフィス変革のような話をすると、今後はオフィスの意義が変わってくると思っていて。例えばオフィスが何か目的を持った人たちが集まる場所になれば、その目的に準じた仲間が出てきて、今まで以上にコラボレーションが生まれるんじゃないかなと思っています。生産性上げたいなら、もしかしたら在宅の方がいいかもしれないですけれど、生産性を上げるためのオフィスがあっても面白いですよね。今後はある目的にあわせることがオフィスの役割になるんじゃないかと思っています。

一個のことに固執せず、グラデーションを持つ

ここで質問をピックアップしたいと思います。「与えられる仕事ではなく自ら作る仕事へ踏み出す方法やコツをおしえてください」という質問ですね。お二人としては、どんなものがあると思いますか?

太谷:普段から自分で何かアクションを起こしていないと、与えられる仕事で終わってしまうのは普通だと思います。明日からいきなり自ら仕事を作るのは難しいので、例えばまずは情報収集とか、人に会うとか、そういった小さなことを日々積み重ねていくと、あるタイミングでやるべきことに気が付いたり、勝手に情報や人が集まってきたりするかなと。

その結果として自ら作る仕事ができるようになると思います。いま何かやっている人たちは、こうなると思っていなかったと言っているパターンが意外と多いなと感じています。

土井:私がよく話をすることの一つにエフェクチュエーションとコーゼーションという話があって。簡単に説明するとエフェクチュエーションが手段や行動ありきの考え方で、コーゼーションが目的ありきの考え方のような感じです。それをいったりきたりすることが大事だと思っていて、ここで言うと与えられる仕事って目的思考なんですよね。

一方、自分で作る仕事は行動思考で、未来はどうなるか分からないけど今できることやる。今できることというとスキル的なできることもそうですし、人との繋がりや、これならできそうといったような想いでもいいですし、様々な切り口で考えて始めるのがいいと思っています。いきなり自ら作った仕事なんて、できないと思うので。

ありがとうございます。最後にもう一つ「今の会社に不安はないのですが、ただ漠然と新しいことにチャレンジしてみたいとも思います。どうしたらよいでしょうか」という質問がきています。お二人はどう考えますか?

土井:先ほどと繰り返しになりますが、グラデーションを持つという意識を持つだけでも変わってくると思っていて。1社でしか働けないとか一つのことしかできないと思って悩んでいるよりも、どんどん複数のところに所属していくべきです。それが例えばボランティアだってよくて、お金をもらっていなければ契約も結んでないような活動でも、だんだんそれが仕事になってくことはある。とにかく何か壁があると思わないで、やってみるとマインドが大切ですね。

なるほど。太谷さんいかがですか?

太谷:そうですね、今の仕事や会社に不満がないのであれば、ある程度自分のやりたいことにマッチしていると思うので、その中でさらに自分ができることを探してみるのがいいかもしれません。

例えば大学向けの営業担当であれば、その周りに学生や教職員がいるので、学生に対して就活相談を無料でやってみようとか、コミュニティに参加してみようとか。そういったことから始めるとその先に、ビジネスという観点でサービス化していける部分まで繋がっていくかなと。

そういう行動を起こしていると関係ないと思っていた本業と外の活動がリンクするタイミングが絶対あるんですよ。これがリンクすると最高で最強なんですよね。成長した自分と本業でやりたいことがマッチすると、想像できないくらい本業の質が上がると思います。

お二人ともありがとうございました!

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今後もH¹Tは『H¹T LAB~働き方改革最前線~』を定期開催し、様々な切り口からワーカー本位の働き方について考える場を作ってまいります。