子育てと仕事の両立支援。
子どもの近くで集中して働ける環境づくり

2020.02.21
インタビュー

H¹Tは、キッズスペース併設のワークスペース「room EXPLACE」と提携し、会員向け予約システムを無償提供している。room EXPLACEは、東京メトロ(東京地下鉄株式会社)が開始した新事業。「働きながら子育てをする人を支援したい」というコンセプトへの共感から、H¹Tとの提携が決まった。今回は、room EXPLACE事業の立ち上げから現在の運営までを一貫して担っている桶田麻衣子氏に、働きながら子育てをする上での現状の課題とは何か、その課題を解決するための事業内容を詳しく伺った。

【プロフィール】
桶田麻衣子
東京地下鉄株式会社 経営企画本部 企業価値創造部 新規事業推進担当 課長補佐
新規事業の企画・立ち上げ・運営を担当。2019年3月にオープンした「room EXPLACE門前仲町」「room EXPLACE東陽町」をはじめ、従業員向けの企業主導型保育所の運営などを手がける。

キッズルーム併設 子どものそばで働ける場所を提供

まず初めに、room EXPLACEの事業内容について教えてください。

room EXPLACEは東京メトロが運営するキッズルーム併設のコワーキングスペースです。今年3月にオープンした施設で、東京メトロ沿線の、都内近郊の2ヶ所で展開中です。

この事業の発案者と私が、検討当時子育て中だったため、子育てと仕事との両立の負担を軽減したい、と考えたことが立ち上げのきっかけでした。子育て中の親は、子どもの近くで働きたいという思いから、在宅で働く人もいます。しかし、実際に子どもがそばにいると、集中して働くことは難しい。子どものそばにいながら、集中して働ける環境を作りたいと思い、room EXPLACEをスタートさせました。

併設するキッズルームには、お子さまのお世話をするスタッフが2名常駐。仕事に集中してもらえるような環境を作っています。また、2名のうち1名は外国人の先生のため、お子さまが自然に英語に触れる機会も提供しています。

どのような方が使われていますか?

主に近隣にお住まいの方で、個人事業主の方やテレワークで仕事ができる会社に勤めている方、資格勉強をしたい方などに利用いただいています。キッズルームは、復職はしたけど子どもをまだ保育園に預けられず、在宅で仕事をしているお母さんなどが利用されていますね。

土日になると、お父さんがお子さんを連れて来られることも。この施設はカラーがピンクなこともあり、女性向けのイメージがあるのですが、「お母さん」だけでなくもちろん「お父さん」のためにも存在しています。最近は土日のご利用も増えていますね。

room EXPLACEは時間単位で利用できるコースと、月額固定で利用できるコースの2つがあります(※キッズルームは、時間単位のご利用のみ)。仕事場として定常的に利用される方、試験日まで集中的に利用したい方など利用頻度が高い方には、月額で会員登録していただいています。テレワーク制度などを使って、月に何日か在宅勤務をされているなど、月の使用頻度が高くない方は時間単位の料金体系で利用されています。


H¹Tとはどのように関わっているのですか?

H¹Tの会員の方には当社の施設もご利用いただけます。今は提携している範囲がワークスペースだけなので、キッズルームもご利用されたい方はroom EXPLACEにも登録が必要になります。

H¹Tを運営されている野村不動産さんにお話をいただいたとき、「会社員の人にもう少し柔軟に働ける環境を提供したい」と仰っていました。心身の健康や感性の育成、人生の豊かさの実現を目指した「ヒューマンファースト」な環境を提供されようとしているところに共感し、提携することになりました。提携開始からまだ1カ月くらいですが、すでにH¹Tの会員のお客さまにも何名かご利用いただいています。 今までは個人のお客様にご利用いただいておりましたが、野村不動産さんと連携することで、法人の方への認知も広がり、より多くの方に利用していいただけるのではないかと期待しています。


子育てと仕事の両立に多くの課題 地域に密着した解決策提案

事業を立ち上げる時、子育てと仕事の両立にどんな課題を感じていましたか?

まず、子育て中に誰も頼れる存在がいないことを課題と感じました。育休中に復職に向けて少し勉強や準備をしたくても、それができる環境がなかなかありませんし、休みの日に何かやりたいことがあっても、子どもより用事を優先できない人が多い。「家族以外にも、誰か少し手伝ってくれる人がいたらいいのに」と思ったんです。そんな経験から、何かあったときに、「ちょっと見ていて」と頼れる環境を作りたいと考えるようになりました。

次に、家と会社との距離が離れていることですね。復職した後、子どもが保育園での生活に疲れているから少し早く帰って近くにいてあげたいときがありました。しかし子どもとの時間を大切にしようとすると、時短勤務にするという選択になります。子育ても仕事もどちらも大切にしたいのに、時間を取り合う関係性にあるため、どちらかを選ばなければいけない状況でした。家と会社を近い場所に寄せることが出来れば、今よりも負担感なく、暮らしていけると思いました。

それから、子育てをしながら罪悪感を持つ人が多くいることも課題に感じました。例えば、自分が子どもを見られる状況なのに他の人に見てもらうことで、多くの親は子どもに対して申し訳ない気持ちを持ってしまうようです。これを解消する必要性を感じました。そのため、room EXPLACEのキッズルームでは英語に触れられるという付加価値をつけ、罪悪感なくお子さまを連れてくることができる場所を作りたいと考えています。他にも、周囲が頑張って仕事をしているのに自分だけリモートだったり、早く帰ったりすることに罪悪感を持つ人も多いです。どこでも働けるという価値観を当たり前にすることの必要性を感じています。

実際に利用されたお客様の反応はどうですか?

room EXPLACEのキッズルームを利用してくださるお客さまの中には、区の一時保育を利用されている人も多かったようです。しかし区の施設は常に予約がいっぱいで「今日行きたい」というときには中々利用できないと伺いました。でも、お子さんのいらっしゃる家庭は、前日や当日にその日の行動が決まることが多く、なかなか前もった予約をすることが難しい。私たちは、前日16時まで予約も受け付けていますし、空きがあれば当日でもご利用いただけますので、急に必要になった方に使っていただくことが増えています。


働く場所は自分で決める。主体的な働き方の実現を

今後の展望を教えてください。

自分自身で主体的にライフスタイルやワークスタイルを選択できる社会にしていきたいと思っています。子どもの近くで働けるroom EXPLACEのような環境を整えていくことで、子どもと一緒にいる時間を犠牲にして出社しなければならないという、子どもか会社かを選ばなければならない状況を、少しずつ解消していきたいです。「今日はこの場所で仕事をしよう」「今日は会社に行こう」など、自分自身が主体的に働く場所を決めるという働き方、暮らし方を実現していきたいです。

そのためにも、まずは今ある2拠点をしっかり地域に根付かせて、子育て支援という目的を果たせるように頑張っていきます。今、遠方から来てくれているお客さまから「近くにあったらいいのに」という声もいただいているので、野村不動産さんとの連携を含め、将来的には東京メトロの沿線とその郊外部にも拠点を広げていきたいです。