新型コロナでどう変わる?
ベンチャー企業のこれからのオフィス戦略を考える

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新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、可能な業種では在宅ワークが推奨されるようになりました。その結果、これまでの「集まって仕事をする場所=オフィス」という考え方も変化してきています。特に柔軟な動きが可能なベンチャー企業では、オフィスをどのように活用していけばよいのでしょうか。今回はベンチャー企業の育成や支援を行っている山口豪志さんとH¹T事業責任者の宮地の対談をお届けします。

【プロフィール】
山口豪志
株式会社54 代表取締役社長
1984年1月5日生。岡山県岡山市出身。2006年からクックパッド株式会社にて、広告事業・マーケティング事業の創成期より参加、2009年の同社IPOにトップセールスにて貢献。12年より3人目の社員としてランサーズ株式会社に参画し、ビジネス開発部部長、社長室広報チームリーダーを歴任。15年5月に株式会社54を創業。2017年7月、プロトスター株式会社に代表取締役COOとして参画。2019年3月より壱岐島へ移住。著書に『0 to 100 会社を育てる戦略地図』(2017.11 ポプラ社)、『逆境のビジネス略歴~山口豪志編~』(2019.1 デザインエッグ社)がある。

宮地伸史郎
野村不動産株式会社 都市開発事業本部ビルディング事業一部 事業企画課 課長

オフィスだけが仕事場ではない時代に

在宅ワークが推奨されるようになり、オフィスが必要なのかという議論も出るようになりました。山口さんの支援しているベンチャー企業は、働く場所の変化が起きていますか。

山口さん:新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、オフィスを持つのをやめた企業もいくつかあります。特に、もともとオフィスがなくても取り組みやすい事業形態であるIT企業に多いですね。

その他にも、これまで対面で業務を行ってきた人材系の企業でも、リモート化を推進し始めています。従来求職者との面談は必ず来社してもらって対応していたのを、オンラインで行ったり、自宅近くの貸会議室に切り替えたりといった変化も起きています。

広い固定のオフィスを持つのではなく、いくつか分散して拠点を持ち、目的ごとに場所を選ぶスタイルに変えた企業が増えつつある印象です。

H¹Tでもベンチャー企業の方々が積極的に利用していると伺いました。

宮地さん:新型コロナウイルス感染症が流行する前から、固定のオフィス代わりじゃないかというほど、長時間利用されていました。オープン席を使い、話さずに作業されている方が多いですね。山口さんが仰ったオフィス以外の分散拠点として活用いただいているのだと思います。

長時間作業のため利用されることの多い、H¹T新宿西口店のオープン席
オフィスを小規模あるいは分散して、仕事をリモートにしても、ビジネスの成果は従来通り出せるものでしょうか。

山口さん:業態によりますね。Web系の企業に多いですが、会社のミッションやゴール、そのためのKPIが明確で、各々の業務分担がきれいに切り分けられていると、フルリモートでも成果が出やすい印象です。

一方で、いま僕が関わっている医療系サービスの20人規模の企業では、リアルで集まって進めています。というのも、医療の現場は人対人。クライアントとも対面して進めていくスタイルのため、社内でも顔を合わせて仕事をしようという思想を持っているからです。

完全にオンラインにするだけでなく、たとえば入社半年までは研修でどこか集まるというように、ハイブリッドな形にすることもできます。ビジネスモデルや企業文化に合った方法を取ることが大事です。

山口さん

企業フェーズや文化に合ったオフィス選びを

ベンチャー企業がオフィスや働く場所を選ぶ際、気を付けるべきことはありますか。

山口さん:企業の大きく分けて3つの成長フェーズごとに、アドバイスを変えています。

第1段階となる起業直後の初期フェーズでは、皆で企画を考え、練り込むことが必要になるので、やはり集まれる場所があった方がいいと思います。そのための場所として、コワーキングスペースは有効です。

小さなアパートの一室を借りるという選択肢もありますが、駅からのアクセスが良いなど利便性が高く、ホワイトボードやプロジェクター、コピー機など設備が充実している点で、コワーキングスペースを利用するメリットが大きいと思います。またイベントができるオープンスペースを併設しているところが多く、交流の場として活用できることもオススメするポイントです。

スタートアップ企業は潤沢にお金を使えない分、自社の影響力を広げるためにどこに投資をするかは重要だと思いますね。スタートアップでは営業や採用、CSなどさまざまな目的でイベントを行いますが、そのためにはオープンスペースが近くにあると便利です。withコロナの時代においても、この流れはあまり変わらないのではないでしょうか。仕事の依頼に繋がるような偶発的な出会いは、やはりリアルな場の方が起こりやすいので。アパートの一室を借りるよりも、オープンスペース付きのコワーキングスペースを利用したほうがパフォーマンスが高いと思いますね。

次のフェーズでは、いかがでしょうか。

第2段階として、営業専任のメンバーが入ったり、人数が数十人くらいの規模になったりすると、ある程度業務内容が分業化されてくると思います。そうしたら、固定のオフィスにこだわることはないでしょう。必要なときに皆が集まって会議ができる場所さえあれば十分です。

そこから第3段階のIPOを考えるフェーズになってくると、プライバシーマークや機密情報の取り扱いなどの対応をしなくてはなりません。そうすると、セキュリティ対策を万全に施した固定のオフィスが必要になってきます。

ただ、固定オフィスのあり方については、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに変わっていくのではないかと思います。これまでは自社オフィスにイベントスペースやバーをつくり、催事を充実させるベンチャー企業が多かったです。採用の際に「素敵なオフィス」があるとアピールしたり、従業員への帰属意識を高めたりと、ある意味熱狂させることがテーマでした。
しかし新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、コストへの意識がシビアになりました。今後はコストを抑え、変化に耐えられるオフィスニーズが高まってくるのかなと感じています。

そうなると、これからはオフィス環境の良さではなく、「何のためにやるか」で人を惹きつける力が大事になってきます。一貫した企業文化があるか、それをきちんと言語化し発信できるかが、企業の成長をはかるバロメーターの一つになってくるのではないでしょうか。

H¹Tとして、ベンチャー企業にこう使って欲しいという思いはありますか。

宮地さん:世間では、オフィスを固定型にするか分散型にするか、対面で業務を行うかフルリモートで行うかという二項対立で語られることがありますが、そんな単純なものではないと思っています。企業の規模や外部環境の変化、社員の働き方の変化、さまざまな要因でオフィスの在り方は変わっていきます。たとえば、1週間のうち2日オフィスで働いて、2日自宅で働いて、1日はH¹Tで働くといったように、複数のワークプレイスを組み合わせて働く、そんなスタイルになっていくのかなと思っています。

また、山口さんが言われたように、企業のフェーズによっても適したオフィスのあり方は変わってきます。そうやってオフィスのあり方が変動していく中で、H¹Tはオフィスを大きくしたいとき、小さくしたいとき、どちらにも対応できるつなぎ目の役割を担えるのではないかと考えています。時間貸しであるという面でも、使いたいときに必要な分だけ使ってもらえれば嬉しいですね。

宮地さん

より使いやすいファリシティとなるために

ベンチャー企業がオフィスを拡大していく際に気を付けるべき点はありますか。

山口さん:固定費を上げすぎないということに尽きます。ベンチャー企業の周りにいろいろな人が集まってくるときに、フレキシブルに使えるスペースが増えれば増えるほど働き方のバリエーションが広がります。そうして企業が働きやすくなればなるほど、社会全体がよくなっていくのではないかと思っています。

宮地さんは、固定費についてご意見はありますか。

宮地さん:利用料が高いと結局企業に多くの選択肢を与えられないことになるので、手ごろな価格帯に抑え、チェーン展開しているシェアオフィスの中ではかなり安い料金形態にしています。

今後も選んでいただける使いやすいファシリティを目指し、研究を重ねていきます。ぜひ山口さんにアドバイスいただければと思います。

山口さん:オンラインで人と人が接する機会が増える一方で、リアルな場で人と接する機会はより重視されると思っています。出会いを含めた設計ニーズはますます高まるでしょう。H¹Tさんは、そうした出会いの場であり、仕事を行う場でありという役割を、今後さらに果たしていかれるのかなと期待しています。

多様な選択肢を与えられる店舗展開を

withコロナ時代には地方で働く人が増える、という予測も生まれています。今後働く場所はどう変化していくとお考えですか。

山口さん:私は、働く場所が大きく変化するとはあまり思っていません。変化があるとしたら、事業部のようなチーム単位で、採用方針や業務の特性に合わせて働く場所を選ぶ時代になるのではないでしょうか。

そうした状況下で、H¹Tとしては今後どのような展望をお持ちでしょうか。

宮地さん:利用者の方に選択肢を与えられる立地にあることを意識しています。たとえば自宅とオフィスの間の地点にあり、サードプレイスとして利用してもらえるというように。また、地方にも進出することで、地方で働くという選択肢を提供できるかもしれません。そうやって企業が幅広い選択肢を持ち得る立地に出していき、最後のピースとして存在できればと思います。

山口さん:H¹Tさんが各地にあると選択肢が増えて、働き方の個人の自由を守ることができると思います。特にこれから起業したり、何か新しいことをやろうとしたりしている人たちにとっては、ポジティブな話ですね。

ありがとうございました。